とある画家のアトリエ

動物たちにストーリーを与える絵描きの活動記録

ぶっちゃける、その先に何がある?

「これからの人生は自分のために生きる」

 
そう語った彼女とは数年前に仕事を教えてもらったことが縁で、職場が離れた今も定期的に会う中だ。今までずっと付かず離れずの距離を保ち、お互いの込み入った話も幾度となく話してきた、血のつながりはないが身内のような存在だ。

彼女の今まで経験してきた計り知れない痛みや辛さは知っていたし、何度も口を挟みそうになったことはあったけれど、できるだけ傍観するように努めてきた。なぜなら、人の経験を奪うことは人の成長を奪うことだと思っているからだ。


わたしの周りに集まる人はなぜか心に傷を持った方が多く、そのほとんどの人が傷ついたままで、新しい一歩を踏み出せない人だ

理由は人それぞれだが、人は自分を何かから守るため歩みを止めているように見える。まれに無意識にそうしている場合もあるのだけれど。

 

彼女の傷はその中でも特に深いものだけど、彼女の底に秘める強さと優しさを知っていたから、いつかまた歩き出してくれることを願い、信じたいと思っていた。だから、今日にいたるまでただただ見てきた。

先日食事をした時に、彼女は冒頭の言葉を何度も繰り返していた。それは彼女が抱えていた荷物をこれから手放すための決意の表れだったのだと思う。

自分ことではないのに、わたしの心のなかにしまわれていた氷がひとつ、ゆっくり溶けていくような気がした。人が自分の人生を生きようとする姿は、とても美しいし尊いことだと思う。